ブラヤモリ山形編の2回目です。
#11 山形 佐藤繊維 工場めぐり 「ブラヤモリ」
2日目は朝から佐藤繊維さんの会社訪問。
ニットとは
午前中はニットの歴史、成り立ちについての講義、実演をまじえながら聞きました。
18世紀にイギリスで起こった産業革命以前は糸をつくるのは手仕事でした。
ミュール精紡機と呼ばれる機械が出来たことで紡績の歴史は大きく変わります。
動物の毛を「よって、ひっぱって、まきとる」。
この3つの動作で糸はつくられています。
これ、なんだかわかるようで、よくわからないですよね。
僕もそうでした、実際にその場で実演いただいたときに、
「オーッ、そういうことだったのか―」と
長年、繊維業界にいながらこんなことも知らなかったなんて。
「よって、ひっぱって、まきとる」
ひっぱることによって、よりが移動する、そして移動したところが糸になる。
いや、やっぱりうまく説明できないな。
ほっときましょう。
とにかくこの「よって、ひっぱって、まきとる」この動作を機械で自動化したわけですから、考えた人は天才ですね。
当時のイギリス人、フランス人が目指していたのは「きれいな糸をよりきれいに」。
それからその手法はイタリアへと渡りイタリア人はそこに「やわらかい糸をよりやわらかく」という技術を加えていきます。
その後に日本でそれを「より安くする」という技術を開発します。
「安くする」つまりスピード、大型、オートメーション。
ところが時代は変わり、この「安くする」という技術は中国へと移行することになります。
実際に現在、日本で販売されているニットの99.5%が海外製という異常な事態となっています。
そこで生き残りをかけて佐藤繊維さんが開発したのが、やわらかい毛バルキーな毛を掛け合わせて糸をつくるといった独自の技術。
直接ヨーロッパに売りに行ったところシャネルに使ってもらえることとなり、一気に世界の佐藤繊維への道が広がっていきます。
ここまでは、かなり苦労したようですが、
この技術を可能にしたのが、この後紹介する紡績機です。
紡績工場
午後から佐藤繊維さんの工場見学。
まずは紡績工場から、日本国内でニットの糸を一貫製造しているのはここだけだそうです。
毛から糸がつくられていく工程は、午前中の講義のおかげで何か神秘的な瞬間に立ち会えているような気分にさえなりました。
GEA
そしてこの紡績機です。
「トヨダ」と書いてあります。
自動車のトヨタは昔「トヨダ」だったそうで、その時の機械です。
佐藤繊維さんにはこういった古い機械もたくさんあり、そこも特徴。
新しい機械ができるとみんなそれを買って、古い機械は捨ててしまします。
なので、この機械も残っているのはここにあるものだけ。
で、これなのです、佐藤繊維さんの技術を可能にしているのは。
先述したように、新しい機械では「きれいな糸をよりきれいに」「やわらかい糸をよりやわらかく」なので、たとえばやわらか毛とバルキーな毛を掛け合わせることが出来ません。
(異質なものは排除されてしまいます。)
古い機械にはそのような機能が無いため、古い機械を改良して使っている佐藤繊維さんだけが可能な技術となったそうです。
これが世界の佐藤繊維さんの礎を築きました。
「そして、これがそのGEA(ギア)だ。」
と機械のカバーを開けて内部をみせてもらった時は、鳥肌ものでした。
昔から変わらずゆっくりと回転をし続けているGEA(ギア)の姿。
お気づきのように、新しいお店の名前「GEA」もここからきています。
「糸は設備がつくるんじゃない、人間がつくるんだ。
人間の創意工夫の中からしか、新しいものは生まれてこない」
との佐藤社長のお言葉に胸が熱くなりました。
こんなところから生まれているのがrolcaのニットの人気の理由でもあります。
その後も、編み、染め、縫製等、それぞれの工場の見学をさせていいただきました。
染の工場はまるで要塞所のような雰囲気。
リンキングとよばれる縫製。
ホールガーメントという最新の無縫製の編み機も多数あります。
佐藤社長と僕のツーショット。
リスペクトしかありません。