リネンは麻ですが、日本で昔から麻といわれてきたヘンプと違いがあるのでしょうか。どちらも綿よりも丈夫で古くから使われてきた植物ですが、意外な違いもありました。
リネンとヘンプ、原料植物の違い
リネンは亜麻科の亜麻から、ヘンプは麻科の大麻から繊維がとられます。亜麻は60cmくらいの植物なのに対し、大麻は人の背丈より高い2~3mほどに。
どちらも茎から繊維をとり織られた布は、ハリがあって丈夫で涼しく強いという特徴を持ちますが、違いもあります。
リネンは原料が小さな植物のため細く短い繊維でしなやかな糸になり、ヘンプは繊維分子がやや太く、網に使用されるほどしっかりと丈夫で硬い糸になります。
リネンとヘンプ、使われてきた地域の違い
リネンもヘンプも太古の昔からある聖なる繊維として使われてきました。エジプトでは紀元前5000年くらいにはリネンの布が織られ、衣類として着用されました。ミイラを包んだのもリネンの生地なのです。
その後、ヨーロッパを中心にリネン製品は発達していきます。対して、アジアではヘンプやラミー(著麻)がよく使われました。日本で神前に手向ける”幣”(ぬさ)はヘンプで織られたもの。また、神前に捧げる清らかな衣もヘンプやラミーで織られています。
麻と麻以外になる?布表示での驚く違い
麻という言葉は、”茎や葉から採った繊維”にあてはめられます。リネンもヘンプも繊維としては麻に分類されるのですが、衣類の表示では違いがあるのをご存じでしょうか。
衣類で”麻”と表記されるのはリネンかラミーの2種類で、ヘンプは”指定外繊維(ヘンプ)””指定外繊維(大麻)と表示されます。
日本では、古来から麻というと通常はヘンプを指しました。ところが麻薬を得られることで第二次世界大戦後、大麻は大幅に規制され栽培地が限られていきました。
そのことも影響し、一般的な衣類のみならず日常からヘンプは消えていきました。日本では戦前まで”麻=ヘンプ”だったため、今でもそのように思う人は多いようです。しかし、麻と表記される衣類にはヘンプは使われていないのです。
リネンとヘンプの着心地の違い
ヘンプはコシが強く、とても頑丈で耐久性のある布となります。骨董市などで見られる昔ながらの蚊帳の生地がヘンプで織られた生地です。とても丈夫で涼しいのですが、蚊帳生地を素肌に直接まとうのは少し痛そうであまり考えられません。
リネンは”月光で織られた生地”ともいわれ、細くしなやかな繊維で、涼しさを残しながらも光沢のあるやわらかな生地となります。リネンはフランス語で”ラン”。高級繊維のリネンを使用した女性の下着から”ランジェリー”の言葉ができたように、素肌にまとっても気持ちのよいのがリネンの生地なのです。
ヘンプはハリが強く型くずれしにくいので、帽子やバッグには良さそうですが、洋服にすると身体になじむまで時間がかかります。リネンは洗うたびに柔らかくなり、身体にしっくりとなじむようにもなります。
”麻=硬い”をくつがえすリネンの柔らかさ
日本では長年ヘンプやラミーが麻と呼ばれてきたので、”麻は涼しいけれど硬い”と思ってしまいがちです。しかしリネンはそのような麻とは違い”涼しくて柔らか”。これが近年リネンが人気の一つの理由なのでしょう。
ロルカオンラインショップには、リネンの中でも最上級であるアイリッシュリネンの服を取りそろえています。一度着ると手放せない着心地の良さを、ぜひ味わってみてください。